水稲の病害虫の中でも、今回はカメムシについて取り上げてみました。
斑点米カメムシの例
水田に発生するカメムシは、斑点米(米粒に茶褐色の斑点が残った米)の原因になるため、斑点米カメムシと呼ばれます。
斑点米は、玄米の検査規格における「着色粒」に分類されるため、玄米の等級が下がります。
斑点米カメムシの種類は、地域によって異なります。ここでは関西地方で発生する主な斑点米カメムシを紹介します。
クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ
成虫で越冬します。越冬後、両者が活動を開始する時期は2種で異なりますが、クモヘリカメムシは5~6月、ホソハリカメムシは4月頃と言われています(地域、年次により異なります)。
水田への飛来侵入は、イネの出穂期です。イネが出穂すると飛来し穂を加害し、そこで繁殖します。
そのため、①第一世代の飛び込みを防ぐ出穂前防除と、②第二世代の幼虫多発を防ぐ出穂後防除(出穂1週間後頃を目安)が効果的とされています。
イネカメムシ
近年全国的に増加傾向となり、県によっては従来の優占種を上回る発生が確認されています。
イネカメムシの特徴は、雑草を寄主として利用する傾向が非常に低く、越冬場所(落ち葉下など)から成虫が出穂直後の水田に直接飛来し産卵する特徴があることです。このため、カメムシ防除としての雑草対策では、発生を防げない難しさがあります。また、雑草での発生数をカウントし、水田への飛来時期を予測する発生予察ができないため、発生時期の推定が従来の優占種より困難です。
イネカメムシは、斑点米を発生させるだけでなく、成虫が出穂直後の穂の小穂軸を加害することで不稔籾を発生させます。そのため、品質低下に繋がるだけでなく、収量低下を引き起こす可能性があります。イネカメムシ対策のためには、より、出穂前防除が重要となります。
カメムシ薬剤防除の例
①出穂2週間前、②穂ばらみ期の2回、防除を行います。カメムシの他にも、ウンカ類、いもち病、紋枯病などの防除が一度にできる総合殺虫殺菌剤を使用する場合が多いです。
※防除時期は、地域や発生程度によって異なります。
ここでは、カメムシに効果のある成分を紹介します。
エトフェンプロックス(出穂前)
広範囲の害虫に有効。ピレスロイド系。
エトフェンプロックスを含んだ薬剤の例:トレボン
エトフェンプロックスを含んだ総合殺虫殺菌剤の例:ラテラワイド粉剤DL、ビームバシボン粉剤DL
ジノテフラン(出穂前)
広範囲の害虫に有効。ネオニコチノイド系。
アルバリンを含んだ剤の例:アルバリン粒剤、スタークル粒剤
スルホキサフロル(出穂後)
水稲のウンカ類やカメムシ類に有効。スルホキシイミン系。
スルホキサフロルを含んだ薬剤の例:エクシードフロアブル
引用文献
玄米の検査規格:農林水産省 (maff.go.jp) (2024年1月26日閲覧)
斑点米 – Wikipedia (2024年1月26日閲覧)